おつきさまが恋しいと泣く君の
首元に 手を掛けた僕を
月だけが 見ていた

そう、月だけが。

髪の毛ほどの一筋の風も無い 寝苦しい熱帯夜
タイマーを付けていたはずのエアコンは
とうの昔に切れていたらしく
肌に張り付く感触と
嫌な気配で目が覚めた

窓から射し込むミルク色の月の光に
ぼんやりと明るい部屋の中で
泣いている君を見て
いつも、いつものお決まりの事の筈なのに
心の奥から腹立だしさが込み上げてきて。

Cry for the Moon.
(ドウシテ 僕ガ イルノニ。
ドウシテ ドウシテ。)

ゆっくりとした動作で君を抱きしめて
静かに声も立てず はらはらと涙を流す君が
あまりに 悲しくて
それを黙って見ている僕は
あまりにも 滑稽だと思うから
もう 泣かなくても いいように
悲しい想いは 忘れられるように

ヒトオモイデ


一筋の涙の後、恐ろしいほどの静寂
あぁ、今日は満月


月の魔力は 人を狂わせるって、本当だったらしい