寒くなったね、と言ったぼく
心がね、と応えたきみ
驚いてその場に立ち尽くしても
きみは振り返らない
何歩か先で 初めて
気が付いたように振り返り
黙ってぼくを見つめるその目に
責められているようで
真っ直ぐな、心の底を見透かされるような
そんな視線に 耐えかねて
先に目を逸らしたから
だから。
きみがほんとうはあの時 何を
伝えたかったのか
今でも 分からないまま
あの視線に まだ 見つめられているようで
つないだ手は 自然に離れて
以降 結ばれることは なかった